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クソ映画祭

来たる日に開催されるクソ映画祭の映画選定用の作品紹介

シベリア超特急

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眠くなる、つまらない、というレッテルを貼られ駄作として捉えられがちなシベ超シリーズ。
ですが水野晴郎という愛すべきキャラクターを面白がれるようになれれば、「デビルマン」がその地位を確立するまで、日本代表のクソ映画はこの「シベリア超特急」だったとわかるはずです。

シベ超に毒されてしまった身としては、水野晴郎が喋るだけで爆笑できるほど笑いの沸点が低くなっているので正確に判断するのは不可能なのですが、それを踏まえてもこのシベ超は趣きに溢れた作品です。
逸話が多く、去年のシネマカリテでの特集上映では本公開前のフィルムを使用しての上映だったのですが、字幕の焼き付け現像液をケチり字幕が赤く変色。スーパーバイザーとして市川崑がクレジットされているものの、このフィルムを見て「名前消しといてね」と言い去っていく、あまりにつまらないと話題になりとある会場では怖いもの見たさに満員など、話が尽きないのも流石と言えます。

シベ超の見所は多々ありますが、柱としては水野晴郎の神がかった棒読みと、どんでん返しの2つになります。DVDでは本編上映前に水野晴郎の自画自賛も収録され、その楽しそうな解説に口を挟むのを躊躇うほどです。「シックス・センス」を見たけれどシベ超をその前に見ていたので驚かなかったという話を聞いた、と自らハードルを上げる様はいつ見てもいい笑顔で趣きがあります。

内容としては、ロシアから満州鉄道に乗り帰国の途に着く山下奉文閣下(水野晴郎)。同一車両に乗り込んだ乗客の1人が殺されてしまい、また1人と死んでいく。閣下暗殺が目的なのか、それとも乗客の中で何か事件が起こっているのか…というお話。

ここまで水野晴郎が当たり前過ぎて説明を欠いていました。水野晴郎は映画評論家かつコピーライターでビートルズ主演映画「a hard days night」を「ビートルズがやってくる、ヤァヤァヤァ!」の邦題に変えた張本人です。
さよならさよならさよなら、でお馴染みの淀川長治の映画塾にも通いキャリアを重ね、金曜ロードショーで解説もなさっていました。「いやぁ、映画って本当にいいものですね。」というキメ台詞とともに存在感のあるキャラクターでお茶の間に親しまれていましたが、2008年に肝不全でお亡くなりになってしまいました。

そんな水野晴郎が長年の夢であった映画監督・脚本・主演を果たしたのがこのシベ超シリーズです。腕を組んで座る姿が多く、「閣下、寝てます?」と言われるのはアドリブなのか、脚本なのか定かではないですが、近所のおじさんの初演技のレベルを維持し全6作にも渡る人気シリーズとなりました。
ファンの間で語り継がれる1、少しマシになった2、宇津井健などの演技力で普通に見れる3、たった1度のお芝居を映像化し「閣下、お時間が…」と故丹波哲郎とのアドリブトークが長く閉館時間を心配したキャストが割って入り閣下の飛んだ台詞を補佐する4、あまり記憶にない5、芝居2作目で問題があったのか所々黒塗りで画面の一部が覆われる7、と様々なバリエーションで魅了してくれるシベ超はとても趣きがある映画です。

水野晴郎の遺稿を汲み取った「シベリア超特急episode1」が撮る撮る詐欺と言われ12月18日公開予定だ、というお話でしたが現在も公開予定はなく、いちシベ超ファンとしては歯痒い思いをしています。いつか遠い未来に見る事はできるのでしょうか。

いやぁ、クソ映画って素晴らしいですね。